逸見鍼灸代表
逸見 裕
筆者
鍼灸師として活動しながら、東洋医学の素晴らしさを現代医学で理解することでより深い鍼灸治療を提供します。東洋医学だけではなくトレーニングやカイロプラクティックを取り入れ、人の身体に対し幅広くアプローチを行い健康社会の実現を目指します。
目次
兪穴とは背部兪穴ともいい、臓腑の気が注ぐところとされています。
経絡の膀胱経上にあり、腰背部に位置します。背骨の左右に縦に並び、ほとんどが各臓器の名前が付けられています。
臓腑と直接つながるため、各臓器の疾患に使われやすいツボになります。
例えば胃疾患では、膈兪(かくゆ)、肝兪(かんゆ)、脾兪(ひゆ)に鍼灸治療するといいとされて、これらにお灸をすることを「胃の六つ灸」と言われます。
背部兪穴は背骨沿いにあり、胸椎や上部腰椎には交感神経幹が通りそれぞれの臓器を支配します。
胃運動では交感神経は抑制に働くので胃を休めるのにも交感神経を活動させることや、交感神経優位では胃運動が起きないため消化不良が出てきます。
背部兪穴に治療をする時は交感神経を活動させるのか、抑制させるのかで刺激の量や入れ方が変わります。
背部兪穴の一つで腎と関連してくるツボです。
腰椎2番目と3番目の間の高さに位置し、腎の治療に用いられます。
腎は足腰を支配し、腰痛などの症状に必要になります。
更に腎は腰から股関節にある大腰筋と関連し、股関節の動きにとても重要になる筋肉です。
大腰筋は身体を支えるためにも重要な筋肉で現代人は弱化しやすい筋肉になります。腎兪の高さに肝臓や胃腸に血液を送る腹腔動脈や腎臓に血液を送る腎動脈などがあります。
腎兪に位置する腰椎や大腰筋などの動きが悪くなるとこれらの動脈の血流量が減少し、消化や尿の生成がうまくいかなくなります。
更に大腰筋に沿って腹大動脈が流れ、骨盤内の臓器や下肢に向かう動脈に枝分かれしていきます。
そのため腎兪は骨盤内の臓器や下肢を支配することが理解でき、治療でよく使うポイントになります。
肝は西洋医学の肝臓と同じですが、東洋医学では西洋医学では言われていないことも含まれます。
東洋医学の肝は「怒り」という感情や「春」という季節などに関連します。
このような関連性は西洋医学の肝臓では記されておらず、東洋医学的な考え方では環境などの自然界と人体を合わせて考えるため西洋医学的な考え方よりも幅広くなります。
肝臓を単体で考えるのではなく、様々な関連を結び付けています。
肝は筋肉の円滑な動きを支配しているため、肝に異常が起こると運動動作にも誤作動が出てきます。現代疾患ではパーキンソン病や原始反射なども肝にあたります。
スポーツ動作でも肝に異常が出るとしなやかな動作ができなくなります。
胆経は胆の経絡になります。
肝と胆は表裏関係で関連性が高い臓腑になります。
胆経は側頭部から体側を通り足の指にまで流れる経絡です。
側頭部の頭痛などは胆経の経絡の問題が多いです。
マラソンランナーに多い腸脛靭帯炎は胆経上の疾患になります。
胆に異常があると腸脛靭帯炎になりやすい身体の動きになると言えます。
肝に問題がありと同時に胆にも影響してくるので、胆だけで治療することは少ないです。
腎は西洋医学でいう腎臓と同じですが、東洋医学ではより広い考え方があります。
腎は先天の精と言われ、生まれもっての生命のエネルギーになります。
年齢を重ねるにつれて腎のエネルギーは少なくなります。
老化と腎は関連するということです。腎のエネルギーが弱化すると骨や髪の毛などに反映してきます。
生殖器とも関連し腎が弱ると不妊症の原因にもなります。
腎は冷えやすく、足の冷えなどは腎陽虚(じんようきょ)と言われます。
足だけではなく体温が低いなど寒がりの方は腎陽虚の状態です。
冷えは万病のもととも言われますが、腎を温めることで様々な病気から解放されます。
脾は簡単に言えば消化器系のことです。
現代的な脾臓とは大きく違ってきます。
脾は後天の精であり、この世に精を授かってから得られるエネルギーを取り込むのに大切な臓腑です。人の身体は食べ物から作られ、体質が出来上がっていきます。
体質は先天的なものと思われがちですが、ほとんどが後天的な行いでできあがります。大人になっても体質は変えることができるため、脾の働きはとても重要になります。
食べ物の消化吸収がしっかりできるほど身体は健康で強くいられます。更にケガをしてからの早期回復や疲労回復なども脾が大切になり、アスリートにも大切です。
脾は肌肉を司るとされ、肌肉は身体の肉のことで、コラーゲン繊維などの肉の張り感を司ります。脾が弱化すると身体の肉に張り感が無くなります。
脾には統血作用というものがあり、血液が漏れ出ないようにする働きがあります。血便や血尿、不正性器出血なども脾の病になります。
胃の経絡のことで、顔面部から喉を通り、体幹の前面部を通り、足の前面部、足の指にまで流れる経絡です。
その名の通り胃の状態が現れやすい経絡になります。
特に有名なツボである足三里(あしさんり)は松尾芭蕉の「奥の細道」にも記載されて、一般の方でも聞いたことのあるツボだと思います。
足三里は胃腸の調子を整えるとされ、免疫向上にも良く健康増進に使われます。
江戸時代では飛脚が長い道のりの途中に足の疲れを癒すためにも足三里にお灸をしていたと言われています。
胃経の経絡では太ももの前にある大腿四頭筋を通ります。
大腿四頭筋は膝痛の方はとても重要な筋肉で、人体でも衰えやすい筋肉です。スクワットのような運動で鍛えることができます。
胃経の流れが悪くなると大腿四頭筋は機能低下を起こしやすく、膝に力が入りにくいなどの症状が出てきます。
気とは身体の中にあるエネルギーで、身体の各機能の働きを支えるものです。
現代医学で置き換えれば細胞にあるミトコンドリアに近いと考え、酸素や栄養素を代謝し、細胞の新陳代謝を促し生命活動をしています。
気虚は気が少なくなっている状態で身体のエネルギーが不足しているということです。
気とは身体の中にあるエネルギーで、身体の各機能の働きを支えるものです。
現代医学で置き換えれば酸素や栄養素などを身体中の細胞に運搬し、新陳代謝を促し、生命活動をしていると考えます。
更に東洋医学ではいくつかの気に分けられています。
原気は両親から受け継いだ先天的なもので、遺伝的な要素をいいます。
原気は後天的なものでも補われ、原気が旺盛であれば、元気のある身体になります。
原気は下腹部の力と関係し、原気が少なくなると下腹部の力が抜け臓器も支えられなく、下腹部が出てくる姿勢になります。
一般的に丹田とはこれにあたります。
宗気は五臓の心と肺に関係があり、いわゆる心肺機能と関係があります。
宗気が少なくなると心拍の異常や呼吸機能に異常が出ます。
胸の筋肉の動きも宗気と関連し、胸の筋肉が硬くなると呼吸が浅くなり、酸素の摂取量が減り、細胞代謝が落ちてしまします。
営気は後天の精から得られる気であり、体内の太い動脈と考えます。食べたものを血液として身体を栄養していきます。
衛気は後天の精から得られる気であり、営気とは違い、体表をめぐる毛細血管として考えます。
体温保持や外的なものから守る働きをします。
衛気が不足すると体温調整ができなく、皮膚の状態も悪くなります。
真気は大きく5つに分けられます。
これらの生理的作用を行うのが真気です。
経絡経穴は経穴の並びを経絡といいます。
経穴は俗にツボのことをいいます。
経絡は基本的にすべての臓腑と繋がり、臓腑の経絡が体表に出てきたのが経穴になります。
その経穴の繋がりを線で結んでいくことで経絡の流れができます。
経絡は筋肉や神経、血管などの繋がりに似ているのも特徴的で、古代ではその繋がりを経絡と表現したのではないかと考えます。
経絡は遠隔的に治療を施すことができ、例えば胆経では側頭部に沢山の経穴が存在し、その経絡は足にまで繋がるため、足の経穴に治療をすることで側頭部の頭痛にも効果があります。
気を補うという意味です。
人には様々な気があり、気が少なくなっている状態を気虚と言います。
例えば、消化器系の疾患で消化不良を起こすような症状がある時には脾気虚(ひききょ)という病状になります。
脾気虚では他の症状として身体の倦怠感や四肢の冷えなどがあり、この様な方には鍼やお灸で補法を行い気を入れていきます。
比較的刺激の少ないやり方がメインになり、鍼は浅く刺し、お灸も程よい温かさで行うことが多いです。
盛んになった気を取り除くイメージです。
症状がきつく、邪悪な気が身体を犯している状態を「虚」(きょ)に対して「実」(じつ)といいます。
例えば咳が酷い症状の時は肺実(はいじつ)と診断することがあります。
肺実では眠れないくらいの咳くらいになります。
それに対して肺気虚の場合では弱々しい咳になります。
その様な実の状態を治療するのに瀉法を使います。
瀉法では鍼を深く入れ、悪い気を外に取り除きます。
補法と瀉法では相反する刺激の入れ方になります。
逸見鍼灸代表
逸見 裕
筆者
鍼灸師として活動しながら、東洋医学の素晴らしさを現代医学で理解することでより深い鍼灸治療を提供します。東洋医学だけではなくトレーニングやカイロプラクティックを取り入れ、人の身体に対し幅広くアプローチを行い健康社会の実現を目指します。
神戸・大阪にて鍼灸施術を実施しております。
お近くの店舗にてご予約ください。