自律神経失調症は針治療で整います【解説と治療法】

針治療を受けられるお客様には、自律神経失調症を改善したいとお越しになられる方がおられます。

この自律神経失調症は、生活習慣の乱れなどにより、自律神経のバランスが崩れてしまい様々な不調として体に現れます。

  • だるい
  • 頭痛
  • めまい
  • 動悸
  • 不眠
  • お腹の不調

など、このほかにも様々な不調を感じておられるのではないでしょうか?

断定的にどこが悪いという判定ができない病名なだけに、ご自身での改善では時間がかかり、不調による憂鬱もなかなか晴れない病になります。

そこで大切になるのはバランスをどうやって正常に戻すのかという点です。

東洋医学では体のバランスを整えることに重きが置かれています。

東洋医学の源流を汲む針治療を行うことで体のバランス(自律神経)を整えることができ、自律神経も正しいバランスに戻すことができるというわけです。

お薬などの治療法もありますが、逸見鍼灸では「体が本来もつ生きる力」を最大限高めて健康を維持する方法をおすすめしていますので、そう言った観点で、自律神経に対する針治療のアプローチをご紹介していきます。

自律神経失調が針で改善される理由

まず自律神経は大きく分けて交感神経副交感神経を表します。

一般的に交感神経は覚醒している状態で、副交感神経はリラックスした状態とされます。

しかしリラックスした状態で交感神経が働いていないというのは間違いで、例えば睡眠中のリラックスした状態でも便が漏れ出ないように交感神経で括約筋(かつやくきん:肛門・尿道周辺の筋肉)を収縮させています。

つまり各臓器がその時の条件に合わせて、無意識に働くのが自律神経です。

自律神経失調症は、その時の条件に合わせて上手く働かない状態で、身体と心がパニックになっている状態です。

自律神経の乱れの例:暑くないのに汗が出る

暑くないのに汗が出ることはないでしょうか?

これも自律神経が乱れている状態と言えます。

よく来られる患者さんで、なにもしていないのに汗が出るなど言われて来られる患者さんがいます。

特に暑くもなく快適な条件なのに汗が酷いと言われます。

汗をかくのは交感神経で支配されており、だらだらと汗をかくのは自律神経失調症と言えます。

これらのほとんどが、俗に更年期障害とされています。

これは東洋医学では気虚という状態です。

東洋医学でよく表現される「」というのは様々な気があります。

その中の真気(しんき)の作用の中に固摂作用があります。

固摂作用は体液が外に漏れ出ないようにする作用です。

汗や尿などがむやみに出ないようにする作用で、これは現代医学の生理学で汗腺を開閉する自律神経の作用と密接に関連していると考えられます。

その気が虚する、いわゆる乏しくなることを気虚といいます。

逸見鍼灸では、自律神経の乱れは気虚として捉え、この気虚の改善をすることが自律神経失調症の改善にもつながると考えています。

気虚になる原因

  • 虚弱体質
  • 食べたものがうまく消化吸収できていない
  • 心身の疲労
  • 不摂生
  • 病気など

これらのことが気虚になっていきます。

気虚の症状

  • 精神の異常
  • 倦怠感
  • 力が入らない
  • めまい
  • 異常な汗
  • 感染症にかかりやすいなど

自律神経失調症の針治療

自律神経の乱れ(気虚)は人によって強弱があります。

少しのストレスでも乱れる人もいれば大きなストレスを抱えても乱れない人、ストレスをため続けて一気に症状として現れる人など、パターンは様々です。

その身体に対してアプローチするパターンも様々で、この治療をすれば改善するという1つのパターンでは改善していきません。

この薬を飲めば改善するという考え方ではなく、その人の体質や性格に合わせ、四季で変化する体質や環境などを考慮して治療を組み立てていくことが大切になります。

東洋医学では人の身体だけではなく、変化する環境を考慮することで針の刺激を変え微妙な気の歪みを整えていきます。

針治療でのツボの役割

次に重要になるのが、その人の身体に反応しているツボを使うことです。

針は経絡経穴(ツボ)を使って治療をします。

俗に胃腸に効くツボと言われますが胃腸のツボは他にも沢山あり、更に胃腸に関連するツボは胃腸の経絡だけではなく肝臓や腎臓などのツボも関連してきます。

身体には主に12個の経絡が流れています。

これが五臓六腑と言われており、この五臓六腑はお互いを助け合いながら身体の中に納まっています。

生理学的に言うと、脳下垂体から出る成長ホルモンは筋肉の成長や骨の成長などを助ける働きがあるのと同じことです。

この五臓六腑のバランスが重要になります。これらも自律神経の調整です。

このバランス関係を微妙に調節するのが針での刺激量です。

胃腸を調節するのも様々な経絡経穴を利用してバランスを整えることができます。

このように自律神経失調症は原因が様々で、その人に対しての治療法をしていかないと自律神経の歪みが整うことはないのです。

針はその歪んだ自律神経を絶妙なバランスで整えることができます。

自律神経の乱れは病なのか

自律神経失調症は病気になる手前と認識してもいいと思います。

自律神経失調症の症状は様々あり、それは身体が危険を知らせているサインと思ってください。

例えば、深い眠りができずに、朝起きたと時に疲れが取れていないという状態も自律神経の問題であり、これを深く考えすぎない方も多く、その場しのぎで休みの日に長時間寝るということをされる方も多いかと思います。

しかし自律神経が正常に働いていれば、睡眠を促すホルモンや疲労を回復させる働きを身体はしてくれます。

自律神経が乱れている状態が長く続き、朝起きた時に疲れが取れていない状態が続くと、次第に他の症状が次々と出てきます。

それは肩凝りであったり腰痛であったりします。

それから高血圧や肥満などの生活習慣病に発展することもあります。

年齢を重ねるにつれて痩せにくくなったというのも自律神経の状態が悪いからです。

運動をしても痩せないというのを年齢や運動量のせいなどにしてそのままにしておくと、それもまた病気の原因になります。

自律神経が正常に働くと内臓の代謝は上がり、糖代謝などのエネルギー代謝が活発になり全身の新陳代謝が良くなります。

このように自律神経が乱れると、様々な症状で「病気にならないように予防してください!」と身体はお知らせしているのです。

そのお知らせに気が付かず無視していると次第に症状は強くなり、身体を段々とむしばんでいき病気になります。

初めのお知らせくらいで針治療をすると改善は早いですが、長い間症状を無視していると改善も時間がかかる場合があります。

めまいなどの症状も自律神経から来るものですが、めまいになる以前から必ず眠りが浅く疲れが取れないことや肩凝りがあるなどのサインがあるはずです。

そこにめまいの薬を飲んでもめまいの症状を止めるだけで根本的な改善には至っていません。

再びめまいを起こすか、薬を飲み続けなければならなく、薬の副作用が他の症状を出すこともよくあることです。

症状を引き起こした原因を改善

症状に対してのアプローチも大切ですが、症状を引き起こした原因を改善しないと解決にはならなく、むしろ恐ろしいことになります。

例えば、めまいに対してめまいの薬を服用し、めまいが出なくなったとします。

しかしそれは、めまいという症状を抑え込んでいるためであり、めまいを起こした原因は改善されていません。

多くの方は、めまいが止まっているので自覚的には治ったと判断してしまいます。

身体はめまいを起こして、これ以上酷い病気にならないようにお知らせしていたのに、お知らせを薬によって消してしまうと、知らぬ間に身体の状態は悪くなっていってしまうことになります。

薬を飲んでいる人は身体の危険信号を抑え込んでいる可能性があるので要注意です。

自律神経失調症は何かしらの症状から始まりますが、自覚症状として気が付かない場合もよくあります。

症状として認識していない人が多いです。

はっきりとした症状が出てきて、薬を使い症状を抑え込んで対処していると身体は悪くなっていく一方で、更に大きな症状に変わっていきます。

そこまで身体のサインを無視しつづけると最悪病院に通う日々になりかねません。

自覚症状が無い場合でも針治療を受けに行くと気が付かなかったことも気が付けます。

どんな人でも鍼灸師が身体を見ると必ず乱れているところを探すことができます。

治療した後はスッキリしている身体に驚かれるでしょう。

そのスッキリの分だけ自律神経は乱れていたということです。

自律神経失調症の針治療の受診目安

自律神経の状態は日々変化します。

急な温度の変化でも敏感な人は自律神経が乱れることがあります。

しかしその自律神経の乱れは身体を守ろうとする働きのため決して悪いことではありません。

急な温度の変化に自律神経が働かずにいると体温調整もできなくなります。

それでは身体は様々な環境や状況に適応できなくなり、生命に関わってきます。

それくらい繊細に自律神経は働くので自律神経も疲れ乱れてきます。

精神的ストレスや肉体的ストレスなど、厳しい環境にさらされている人ほど自律神経は乱れやすいです。

これらのことからそれぞれの針治療の受診目安が異なってくるのでチェックしてください。

1ヵ月1回程度の治療の方

以下のような症状を感じている方には1ヶ月に1回程度の治療をお勧めしています。

  • 朝起きても疲れが取れていない
  • イライラすることがある
  • ネガティブ思考
  • 立ちくらみすることがある
  • 肩凝り腰痛がある

1ヵ月に2回くらいの治療の方

以下のような症状を感じている方には1ヶ月に2回程度の治療をお勧めしています。

  • 朝起きての疲れが酷く1日活動できない
  • 精神的ストレスが大きい
  • 動悸息切れがある
  • 更年期症状がある
  • 肩凝り腰痛が酷い

これくらいを目安に治療してください。症状が落ち着いてきたら1カ月から2カ月程度に1回の治療で十分です。

自律神経失調症の針治療の流れ

1.問診

まずは自覚症状としてどのような症状が出ているか問診していきます。

自覚症状はあくまでも自覚的に感じているものなので、その後身体の状態を触診し検査します。

そこで自覚的に気が付かなった部分も探っていき、本来の原因を見つけていきます。

脈診や呼吸、筋肉の状態など自律神経に関わってくるところを見て東洋医学的診断をしていきます。

2.着替え

次に治療しやすい格好になるために治療着に着替えていただきます。

3.治療

そして治療に入りますが、治療のやり方は人それぞれで異なります。

例えば、更年期障害による発汗が多い場合では、気虚のことがあります。

気虚では疲れやストレス、食の問題などがあげられます。

仰向けの状態でベッドに寝て、手や足にあるツボを使い、精神的緊張を和らげていきます。

心拍数も安定し、リラックスしてきます。

リラックスすると筋肉の緊張が緩み針も刺さりやすくなり心地よい針の感触になっていきます。

それからうつ伏せになり、頭、首、肩、背中、腰、足へと針をしていきます。

針を刺したまま10分から30分くらい症状に応じて針を置いておきます。

この間気持ちよくてほとんどの方が眠ってしまいます。

針を刺す深さも、それぞれで気虚の場合は比較的浅く刺します。

全身の血流が良くなり身体がポカポカとしてきます。

血流が良くなると身体は新陳代謝が上がり治癒しようと働きます。

それから針を抜き、身体の変化を見ていきます。

4.治療後

その時の状態を見て次回からの治療頻度を決定していきます。

治療後は水分補給をできるだけしてもらい、アルコールは避けてもらいます。※アルコールを摂取すると治癒力が落ちてしまいます。

針治療後の経過観察

治療を終えて次回の治療は1週間~2週間くらいでご予約ください。

症状によっては1週間以内の場合や1カ月後の場合もありますが、ほとんどの場合は1週間~2週間くらいが目安です。

その間の身体の状態を感じていただきます。

治療した日はとても心地よく眠れるようになり、リラックスした状態になるので自律神経も休まります。

次の日の朝の目覚めがとても良く快適に過ごせる方が多いです。

中には治療後少し気怠さが出ることもありますので、その時は次回の治療の時にお知らせください。

最初は1週間くらい身体が楽に過ごせると思います。

また自律神経が乱れてくる感じがあるかもしれませんが、基本的に身体が元の状態に戻ることはほとんどありません。

いい状態で次の治療をすることで治療効果は大きくなります。

2回目の治療

2回目の治療は再度身体の検査を行い、前回の状態と比べます。

自覚していることと他覚的に見ての状態を説明していきます。

最初の身体の状態との変化を比べ、針の刺激を変えることもあります。

2回目の治療後は更に身体がいい方向に向かうのでより一層楽な感覚が出てきます。

状態が良ければ3回目の治療は少し間隔を開け3週間から1カ月後くらいにしていきます。

毎週通う方はよっぽど酷い生活スタイルをしていて自律神経が乱れてしまっている人です。

中にはそんな方もいますが、特別なことがない以上3回くらいの治療以降は1カ月に1回の治療で大丈夫です。その辺りは患者さんと相談しながら決めていきます。

自律神経を整える方法

針治療以外にもセルフケアをすることで改善も早く、更に針治療の効果も高いです。

セルフケアとして一番大切なのは食生活です。

アルコールをよく飲まれる方は飲みすぎには注意することが必要ですので、バランスの良い食生活を心がけてください。

他にはお風呂につかることです。

シャワーだけで済ませるより、お風呂に浸かると血流も良くなりリラックスできます。

入浴剤を使うと更に良く、個人的におすすめなのは岩塩などの入浴剤です。

ミネラルを皮膚から吸収できるので細胞が蘇るのと身体の芯まで暖かくなります。

睡眠では、寝る前の部屋の明るさを薄暗くしておくと眠りに入りやすいです。

目に入る光の刺激をなるべく少なくしましょう。

寝る意識は持たず自然と眠りにつくといいので、あまり寝ようと頑張らなくて結構です。

考え事など頭を使うことをすると覚醒しやすくなるので意識は持たないことがお勧めです。

自律神経が強くなってくると自律神経を鍛えることも大切です。

運動サウナなどの刺激です。

運動は朝日を浴びながらのウォーキングから始めるといいです。

サウナは水風呂とセットで行うと自律神経は活発に働き鍛えられます。

最初はお風呂上りに冷水で足元などを流す程度からでも結構です。

食事と睡眠の関係でいくと、朝にたんぱく質を摂ると夜の眠りの時に放出されるメラトニン(体内時計を正常に保つ)というホルモンを作りやすくしてくれます。

朝に卵や納豆、みそ汁などを食べてみてください。

自律神経を整えるにはまずは規則正しい生活ですが、そこに針治療をすることで自律神経失調症は改善しやすくなります。

まとめ

現代社会は大昔にくらべてストレスが多く存在します。

激しいスポーツやハードな仕事などの肉体的ストレスや人間関係などの社会的ストレス、空気汚染や化学物質などの環境的ストレスがあります。

昔に比べて身体にとってストレスになることが多く自律神経が乱れやすくなっています。

その分病気も増え、薬漬けになることも増えました。

これらのストレスから自律神経が乱れ、身体が正しく回復できなくなることから病気になっていくと逸見鍼灸では考えています。

決して症状が出ることが悪いことではなく、逆に症状が現れないほうが危険です。

肩凝りや腰痛などの痛みも身体の中で異変が起きているサインです。

これらの異変は自律神経が徐々に乱れ始めていることから始まります。

ご自身の身体を見つめなおして身体が出しているサインを無視していないかからチェックしてみてください。

逸見鍼灸代表

逸見 裕

筆者

鍼灸師として活動しながら、東洋医学の素晴らしさを現代医学で理解することでより深い鍼灸治療を提供します。東洋医学だけではなくトレーニングやカイロプラクティックを取り入れ、人の身体に対し幅広くアプローチを行い健康社会の実現を目指します。

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